防火対象物点検と消防設備点検は、名前が似ているため混同されやすいが、目的も対象も資格も異なる別の制度だ。ざっくり言えば、消防設備点検が「設備がちゃんと動くか」を確認するのに対し、防火対象物点検は「防火管理の体制が整っているか」を確認する。多くの建物で必要なのは消防設備点検で、防火対象物点検は一定規模以上の特定用途の建物にだけ課される。この記事では、両者の目的、対象になる建物、必要な資格、報告の頻度の違いを整理した。自分の建物にどちらが必要かは用途と規模で決まるため、判断に迷う場合は所轄消防署への確認が前提になる。
2つの点検の目的の違い
まず、両者が「何を確認する点検なのか」を押さえると区別しやすい。
- 消防設備点検: 消火器や自動火災報知設備などの消防用設備等が、火災時に正常に作動するかという設備の機能を確認する
- 防火対象物点検: 避難経路が確保されているか、防火管理者が選任されているか、消防計画に沿った管理がなされているかという防火管理の体制を確認する
消防設備点検は「モノ(設備)」が動くかを見る点検、防火対象物点検は「体制・運用」が整っているかを見る点検、と分けると分かりやすい。消防設備点検の基礎は消防設備点検とはで整理している。
対象になる建物の違い
大きく違うのが、対象になる建物の範囲だ。
| 項目 | 消防設備点検 | 防火対象物点検 |
|---|---|---|
| 対象 | 消防用設備等が設置された多くの建物 | 一定規模以上の特定防火対象物など |
| 目安 | 住宅を除く広い範囲 | 収容人員が多い、特定の構造の建物 |
消防設備点検は、消防用設備等が設置されている多くの建物が対象で、範囲が広い。一方、防火対象物点検は、特定防火対象物のうち収容人員が一定以上の建物や、避難階段が特定の構造になっている建物など、限られた建物にだけ義務づけられる。
つまり、ほとんどの事業用の建物は消防設備点検の対象になるが、防火対象物点検まで必要な建物はその一部にとどまる。飲食店や店舗でも、規模が小さければ防火対象物点検は不要で消防設備点検だけ、というケースが多い。自分の建物が防火対象物点検の対象かどうかは、用途・収容人員・階段の構造で決まるため、所轄消防署への確認が確実だ。
必要な資格の違い
点検を行える人の資格も異なる。
- 消防設備点検: 消防設備士または消防設備点検資格者が行う(有資格者による点検が必要な建物の場合)
- 防火対象物点検: 防火対象物点検資格者が行う
名前が似ているが、消防設備点検資格者と防火対象物点検資格者は別の資格だ。防火対象物点検資格者は、防火管理者としての実務経験などを前提に、講習を経て得られる資格で、防火管理体制を評価する専門知識が求められる。設備の点検資格とは前提も内容も異なる。
このため、防火対象物点検が必要な建物では、消防設備点検とは別に、防火対象物点検資格者による点検を手配する必要がある。両方が必要な建物では、2種類の点検を別々に受けることになる。
報告の頻度の違い
報告の頻度にも違いがある。
| 項目 | 消防設備点検 | 防火対象物点検 |
|---|---|---|
| 報告頻度 | 特定防火対象物は年1回、非特定は3年に1回 | 原則1年に1回 |
消防設備点検の報告頻度は建物の用途で変わり、特定防火対象物は年1回、非特定防火対象物は3年に1回だ。防火対象物点検は、対象となる建物について原則として年1回の報告が求められる。点検の周期や報告のタイミングの全体像は消防設備点検の頻度とスケジュールで整理している。
なお、防火対象物点検には、一定期間、点検基準に適合していると認められた建物が申請により表示を掲げられる制度もある。これは防火管理が良好であることを示すもので、設備の点検とは別の枠組みだ。
どちらが必要かの見分け方
自分の建物にどちらが必要かは、次の順で考えると整理しやすい。
- 消防用設備等が設置されているか → 設置されていれば消防設備点検の対象になる(住宅を除く多くの建物が該当)
- 特定防火対象物で、収容人員や構造が一定の条件に当たるか → 当たれば防火対象物点検も必要になる
多くの建物は消防設備点検だけが必要で、防火対象物点検まで必要なのは規模の大きい特定用途の建物だ。なお、消防設備点検とよく混同されるものに「消防検査」もある。消防検査は開業・使用開始時に一度受ける検査で、定期点検とは別だ。この違いは消防検査と消防設備点検の違いで解説している。自分の建物でどの点検・検査が必要か整理したい場合は、所轄消防署に用途と規模を伝えて確認するのが確実だ。
よくある質問
Q. 防火対象物点検と消防設備点検は両方必要ですか。 A. 建物によります。多くの建物は消防設備点検だけが必要です。特定防火対象物で収容人員や構造が一定の条件に当たる建物は、これに加えて防火対象物点検も必要になります。
Q. 消防設備点検資格者がいれば防火対象物点検もできますか。 A. できません。防火対象物点検は防火対象物点検資格者という別の資格を持つ人が行います。消防設備点検資格者とは別の資格です。
Q. 防火対象物点検の報告頻度はどれくらいですか。 A. 対象となる建物について、原則として1年に1回の報告が求められます。消防設備点検は用途によって年1回または3年に1回で、頻度の考え方が異なります。
Q. 小さな飲食店でも防火対象物点検は必要ですか。 A. 規模が小さければ防火対象物点検は不要で、消防設備点検だけというケースが多いです。対象かどうかは収容人員や階段の構造で決まるため、所轄消防署に確認してください。
Q. 消防検査とも違うのですか。 A. 違います。消防検査は開業・使用開始のときに一度受ける検査です。防火対象物点検・消防設備点検は、使用開始後に定期的に行う点検で、それぞれ目的が異なります。
まとめ
防火対象物点検と消防設備点検は、名前は似ているが別の制度だ。消防設備点検は設備の機能を確認し、多くの建物が対象になる。防火対象物点検は防火管理の体制を確認し、一定規模以上の特定防火対象物などに限って必要になる。資格も消防設備点検資格者と防火対象物点検資格者で別々で、報告の頻度も異なる。まずは消防設備点検が必要か、次に防火対象物点検まで必要かの順で確認すると整理しやすい。自分の建物に必要な点検を知りたい場合は、無料の見積もり依頼から相談できる。
※本記事は一般的な情報の提供を目的としています。点検の要否は建物の用途・収容人員・構造によって異なります。最終的な判断は所轄消防署への確認を前提としてください。