ビルや賃貸マンションの消防点検は、日程の管理から報告書の作成・消防署への提出まで、年間契約で受託する点検業者がある。現地に行けないオーナー向けの段取りも後半にまとめた。
ただし「年間契約」という言葉だけでは、どこまでが料金に入るかは決まらない。どの作業を含むかを契約書に書き、提出を任せた場合も、提出書類の写しと受付の記録を受け取って手続きが終わったかを確かめる。
年間契約で任せられる範囲
点検は6か月ごとの機器点検と1年ごとの総合点検があり、点検の中身は設置されている設備で変わる。消防署への報告は、特定防火対象物(飲食店・物販店・ホテル・病院など)が1年に1回、非特定防火対象物が3年に1回だ(東京消防庁 消防用設備等点検報告制度)。共同住宅や事務所ビルでも、店舗などが入って特定防火対象物(複合用途)になると年1回の報告になる場合があるので、建物の用途区分を消防署か業者に確かめる。
年間契約で確かめる項目は次のとおり。
| 作業 | 契約に入れるか確かめること |
|---|---|
| 日程の管理 | 前回の点検日・報告日をもとに、機器点検と総合点検の予定を業者が組み、事前に連絡してくるか |
| 点検 | 全階・全設備が対象か。点検する人の資格が設備に合うか |
| 点検記録 | 毎回の点検票などを作ってオーナーに渡すか。報告しない年の記録も残る形にする |
| 報告書の作成と提出 | 報告の年に提出書類一式を作り、消防署へ出すところまで受託するか |
| 提出後の確認 | 提出書類の写しと、提出先の運用に応じた受付の記録を渡すか。書類の不備で補正や再提出を求められたとき、誰がいつまでに対応するか、料金に含むか、追加費用がかかる条件は何か |
| 入居者への告知 | 点検日の掲示や案内文の配布を業者がするか |
| 不備と整備 | 点検費に含む整備・部品交換と、別料金になる作業の線引き。追加の改修は別に見積もりを受け、承認してから発注するか |
| 契約の期間 | 開始時に前回の点検日・報告日と次の報告期限を共有するか。更新・解約の条件。終了時は、記録の引き渡しに加え、未提出の報告書と対応中の補正を、旧業者・新業者・所有者の誰がいつまでに出すかを決めるか |
点検の記録は、報告の年でなくても保存しておく。消防用設備等の点検の結果は維持台帳に記録しておくことになっている(消防庁リーフレット)。費用の目安は費用相場、業者の比べ方は業者の選び方にまとめている。
提出を任せても、報告義務はなくならない
消防法第17条の3の3は、建物の関係者に、消防用設備等の定期の点検と、結果の消防長または消防署長への報告を義務づけている。建物によっては、消防設備士か消防設備点検資格者による点検が必要だ(消防法 e-Gov法令検索)。
報告書の届出者は関係者(建物の所有者、管理権を持つ管理者、占有者)で、横浜市は、法人なら法人名と代表者の職・氏名を書くよう案内している(横浜市 郵送等による消防用設備等点検結果報告)。誰の名義で出すかは、設備の維持管理の権限が誰にあるかを踏まえて決め、提出を代わりに行う業者とは分けて考える。業者に代わりに出してもらうときの手続き(委任状が要るかなど)は、提出先の消防署の案内を確かめる。
提出を業者に任せても、関係者の報告義務がなくなるわけではない。報告をしない、または虚偽の報告をした場合について、消防法第44条第11号に30万円以下の罰金または拘留の規定がある。業者の契約上の責任とは別に、提出の状況は自分で確かめる。
横浜市は、郵送で出す場合に、届出済印を押した報告書の返送を希望するなら、提出書類の写しと切手を貼った返信用封筒を同封するよう案内している。記載漏れや添付漏れがあると届出が済んだことにならず、送り直すか消防署で直す必要があるとも案内している。受付の記録の形は消防署と提出方法で違うので、契約の時点で何を受け取るかを決めておく。報告を忘れたときの対処は消防点検の期限切れ・消防署から指導されたときの対処にまとめた。
現地に行けないオーナーの段取り
遠方に住んでいても、建物に入る手段と住戸への立ち入りを調整できれば、オーナーが立ち会わずに点検を受けられる。オーナーの代わりに現地で立ち会う人が要るかは業者に確かめ、要るなら管理人や防火管理者などと調整する。契約の前に、次の4つを業者と決めておく。
- 鍵の扱い。 共用部の鍵と住戸の鍵を分け、誰が預かるか、使ってよい範囲、複製や第三者への受け渡しをしないこと、返却の確認、なくしたときの対応を決める。現地の管理会社や管理人に預ける、キーボックスを使う(置き場所と暗証番号を誰に伝えるか)、追跡できる方法で郵送する、などの方法がある
- 住戸への立ち入り。 住戸内に点検する設備(感知器など)があって立ち入りが必要な場合は、賃貸借契約の定めを確かめ、入居者と日時と入り方を合意する。点検日を掲示しても、鍵を預けても、それだけで入室の承諾にはならない。不在のときに合鍵で入る場合も、事前に入居者の承諾を得る
- 点検できなかった住戸。 点検できなかった住戸の一覧を受け取る。再訪問の調整を誰がするか、期限と回数、追加料金を決める。再訪問の後も点検できない箇所が残った場合は、その箇所と理由を記録し、その後の調整を誰がいつまでにするかを決める。報告の期限が迫っているときの出し方は、提出先の消防署に確かめる。詳しくは不在住戸への対応
- 結果と写真の受け取り方。 結果と不備の写真をメールなどで受け取れるか。住戸内の写真は設備と不備の箇所に絞り、撮る目的を入居者に事前に伝える。入居者の連絡先や写真を、誰と共有し、どう保管するかも決める
賃貸管理会社に物件の管理を任せているなら、点検もその会社経由でまとめる方法がある。管理会社が入居者への連絡や修理の立ち会いまで受託すれば、オーナーの現地対応を減らせる。受託する範囲と追加料金、管理会社の手数料を確かめる。管理会社経由と直接発注は、点検・告知・鍵の管理・再訪問・提出代行の範囲をそろえ、手数料を含む総額で比べる。比べ方はマンションの消防設備点検でも扱っている。
業者の探し方と依頼文
日本消防設備安全センターの「消防用設備等点検済表示登録会員名簿」で、都道府県ごとに登録会員を探せる。名簿は、点検を頼みたい建物の関係者が近くの登録業者を探すためのものだ。当サイトを運営する株式会社Cravalの見積もり依頼フォームも使える。建物の種類と地域を入力すると、対応できる事業者から見積もりの連絡が届く。見積もりの依頼は無料で、点検・改修の料金は各事業者の見積もりで確かめてほしい。
問い合わせで年間契約の範囲を書いておくと、同じ条件で比べやすくなる。
「〇〇市にある〇階建ての〇〇(用途)、延べ面積約〇〇㎡の消防設備点検について、年間契約の見積もりをお願いします。前回の点検は〇年〇月、前回の報告は〇年〇月です。日程の管理、点検、毎回の点検記録の引き渡し、報告の年の書類作成と消防署への提出、提出書類の写しと受付の記録の引き渡し、入居者への点検日の告知まで含めてください。所有者は遠方に住んでいるため、鍵の扱いと住戸への立ち入りの調整方法もご提案ください。点検費に含む整備と、別料金になる作業を分けて示してください。」
よくある質問
Q. 消防点検の報告書の作成と消防署への提出まで、業者に頼めますか 報告書の作成から提出まで受託する業者はあります。料金に含まれるとは限らないので、見積もりと契約書で範囲を確かめてください。代わりに出してもらうときの手続きは提出先の消防署の案内を確認します。提出を任せても関係者の報告義務はなくならないため、提出書類の写しと受付の記録を受け取ってください。
Q. 遠方に住んでいて現地に行けなくても、消防点検を頼めますか 鍵の扱いと住戸への立ち入りを調整できれば、オーナーが立ち会わずに点検を受けられます。住戸内に入る点検は、賃貸借契約の定めを確かめ、入居者と日時と入り方を合意してから行います。鍵を預けるだけでは入室の承諾になりません。
Q. 年間契約にすると、日程や報告期限を忘れずに済みますか 前回の点検日・報告日を共有し、業者が予定を組んで事前に連絡する契約にすれば、日程の管理は任せられます。報告の年の提出まで含むか、契約が終わるときに記録と次の期限を引き継ぐかは、契約書で確かめてください。
Q. 管理会社に任せるのと、点検業者に直接頼むのはどちらがいいですか 管理会社が入居者対応や修理の立ち会いまで受託するなら、現地対応を減らせます。費用は、点検・告知・鍵の管理・再訪問・提出代行の範囲をそろえ、手数料を含む総額で比べてください。
出典
更新日: 2026-10-02
- 東京消防庁「消防用設備等点検報告制度」 https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/office_adv/tenken_houkoku.html
- 横浜市「郵送等による消防用設備等点検結果報告について」 https://www.city.yokohama.lg.jp/business/bunyabetsu/shobo-kyukyu/kanri/tatemono/yusotenken.html
- 総務省消防庁「消防用設備等には定期点検が必要です」 https://www.fdma.go.jp/mission/prevention/items/prevention001_19_hutekisetsu_leaflet.pdf
- 日本消防設備安全センター「消防用設備等点検済表示登録会員名簿」 https://www.fesc.or.jp/08/index3.html
- 消防法(第17条の3の3、第44条第11号) https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC1000000186